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2017.12.8 Fri

Picnic at Hanging Rock(1975)

耽美的な傑作「ピクニックat ハンギング・ロック」(1975)の舞台は1900年のオーストラリア南東部です。映画は2月14日、バレンタインの朝から始まります。南半球のオーストラリアのバレンタインは日差しが降り注ぐ夏の日です。アップルヤード女学校の寄宿舎では、ピクニックに行くために少女たちが身支度をしています。シュミーズや純白のネグリジェのまま白い盥(たらい)に清潔な水を注いで顔を洗い、リボンで髪を結い、バレンタインのカードを憧れの上級生に渡す。少女たちのプライベートをのぞいてしまったかのような後ろめたい背徳感さえ感じる、美しいシーンです。レースの肌着の上からつけたコルセットの紐を、少女たちが協力して締め合うシーンが取り分け印象的でした。体を締めつけるコルセットは忍従と抑圧を物語る小道具ですが、それぞれのコルセットをつけるのを手伝う女生徒たちの姿からは、彼女たちの親密な関係性が伺えるようです。

女生徒たちは女性教師とバレンタインのピクニックに岩山に行きます。生徒たちはみんな白いレースのついたフリルのドレスを着ていますが、ディテールがみんな違うところを見ると、制服ではないのかもしれません。彼女たちが共通して身につけているのは、黒いリボンのついたストロー・ハットと黒い靴下とブーツ、そして服の下のコルセットです。
不思議なことに彼女たちの時計は12時を指したまま針が止まり、岩山の測定に行った4人の女生徒のうち、3人が忽然と姿を消してしまうのです。まるで少女の美しさに魅せられた神々が、彼女たちを神秘の世界に連れ去ってしまったかのようでした。少女たちが何かに誘われたかのように岩山の奥深くに入り込んでいく内に、靴と靴下を脱いでしまうシーンが何とも官能的です。行方不明になった少女は後に1人だけ発見されるのですが、彼女の服の下のコルセットはどこかに消えていました。少女たちがお互いに締めあったコルセットは、彼女たちを現実世界につなぎとめる杭のような役割をしていたのかもしれません。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など

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