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2017.6.9 Fri

Lost in Translation (2003)

 映画監督の夫について東京に来た若い女性のシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)と、CM出演のために来日したハリウッド俳優のボブ(ビル・マーレイ)。それぞれに孤独な二人が出会い、恋とも友情ともつかない、淡い関係性を結ぶ様子を描いた映画『ロスト・イン・トランスレーション』は印象的なシーンで幕を開けます。ホテルのベッドに横たわるシャーロットの後ろ姿の腰のアップです。上半身は映さず、見えるのはシースルーのピンクのショーツに包まれたヒップだけ。インパクトのあるオープニングです。
 ホテルの部屋で一人過ごすシャーロットは、いつもキャミソールとショーツにグレイのプルオーバーかシャツを羽織っているだけのスタイルです。無防備な姿で彼女は窓辺にもたれて、東京の夜景を眺めています。普通はそんな女性を見ると、彼女のプライベートな空間に侵入してしまったような気持ちになるものですが、シャーロットはシャボン玉の膜のようにはかなく透明な、孤独のバリアに守られているかのようです。それはシアーだけどしっかりとヒップを包んでいるランジェリーにも似ています。このシーンで使われたショーツのブランドは大人気となりました。

 このショーツのアップは、アメリカの画家ジョン・カセールの絵画を基にしていると言われています。非常にリアリスティックな画風で有名な人ですが、彼がいつも描いていたのが、シルクのスリップやネグリジェがめくれた状態の
下着姿の女性の腰のアップでした。女性が身につけているショーツはコットンやシースルー、レースと様々で、時にガーターベルトをしていることもあります。顔や全体像が見えない分、想像力をかきたてられるエロティックな人物画です。
 最初、まだ若いスカーレット・ヨハンソンはこのセクシーなシーンに難色を示していたそうですが、監督のソフィア・コッポラが先に実演してみせてくれたのを見て、納得したそうです。女性監督が撮るヒップのアップには、セクシーというよりもインティメイト(親密な)という言葉がしっくり来るムードがあります。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など。

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