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2017.5.17 Wed

BUTTER FIELD 8 (1960)

映画の中の美しいランジェリー姿の女優は枚挙にいとまがありません。しかし『バターフィールド8』(1960)のエリザベス・テイラーほど、スリップ姿が様になった女優はいないのではないでしょうか。映画の冒頭、テイラーが演じるヒロインのグロリアはニューヨークの高級マンションのベッドの中にいます。彼女の自宅ではありません。その前日に情事を持った既婚者の男性の部屋です。表向きのグロリアの職業はモデルですが、内実はお金持ちの男を渡り歩くコールガールです。『ティファニーで朝食を』(1961)でオードリー・ヘプバーンが演じたホリー・ゴライトリーからファンタジーをマイナスして、アダルトな倦怠感を足すとエリザベス・テイラーのグロリアになるといえばこのヒロインの雰囲気がわかるでしょうか。
男が去った後、グロリアは前の日に着ていたドレスが破れていることを知り、スリップ1枚で彼の部屋を自由に行き来します。胸元と裾にアイヴォリーのレースがあしらわれた白いシルクのスリップはそれだけでスタイリッシュで、まるでドレスのようです。大きなバストと信じられないくらい細いウェストの持ち主であるテイラーにぴったりのサイズで、かつ小柄な彼女が引き立つ丈。これはハリウッドのコスチューム・デザイナー、ヘレン・ローズがエリザベス・テイラーのためだけに作ったスリップなのです。フェミニンな服を得意とするヘレン・ローズは、黄金期のハりウッドで多くの女優が絶対的な信頼を寄せていたデザイナーでした。

『バターフィールド8』のシルクのものは、ヘレン・ローズがテイラーのために作った2枚目のスリップでした。この映画の2年前、『熱いトタン屋根の猫』(1958)で、テイラーが自分を抱かない夫に不満を抱える妻を演じた時も、ヘレン・ローズの手によるスリップを着た彼女の美しさが評判になりました。舞台である蒸し暑い南部の気候に合わせて、この時のスリップはコットン・レースのものでした。
『バターフィールド8』 のグロリアはシルクのスリップの上にミンクのコートを羽織って、マンションを後にします。ドレスのようにスリップを着たエリザベス・テイラーの姿は後に多くのデザイナーたちのインスピレーションの源となり、スリップドレスにファーのコートのコーディネートは『SEX AND THE CITY』のキャリー・ブラッドショーをはじめとするニューヨークのヒロインたちの定番ファッションになったのです。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など。

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