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WILD FLOWERS WILD FLOWERS

2017.10.6 Fri

Bell de jour (1967)

ルイス・ブニュエルの「昼顔」は危険な映画です。ヒロインはマゾヒスティックな幻想にとらわれた、若く美しい人妻セルヴィーヌ。医師である夫と何一つ不自由ない生活を送っているのにもかかわらず、彼女はその不思議な心理のせいで、昼間だけ娼婦として働くことを選ぶのです。この大胆な役柄に挑んだのが、カトリーヌ・ドヌーヴでした。若い女性としての美しさ、という意味では彼女が頂点にあった時代です。ドヌーヴの完璧な美貌が、映画の雰囲気をより一層背徳感のあるものにしています。
「昼顔」はそのスキャンダラスな内容だけではなく、ファッションでも話題に挙がることの多い作品です。カトリーヌ・ドヌーヴの衣装を担当したのはイヴ・サンローランでした。上流階級の女たちが秘密裏に売春を行う宿があると聞きつけて、セルヴィーヌがそこを訪れる時の衣装は象徴的です。豊かな金髪を覆い隠すピルケース型の黒いニット帽と肩章のついたミリタリー的なコート。固く身を守るような装いの下に、このヒロインはどんな心を秘めているのでしょうか。そう、観客が知りたいのは本当の彼女なのです。コートを脱ぐとそこにあるのはサファリ調のベージュのワンピース。更に、生身の肉体を包むランジェリーが続きます。

セルヴィーヌのランジェリーで最も忘れがたいのは、とある顧客から特別な要求された時に彼女が着ていた白いレースのブラジャーと揃いのショーツ、そしてガードルのセットでしょう。その顧客がセルヴィーヌにどんなことをしたかは映画の中では秘密にされています。エロティックなファンタジーを観客にかきたてる設定です。全てが終わった後、恍惚の表情を浮かべてベッドに横たわるセルヴィーヌのランジェリー姿はヌードよりもセクシーでした。そのランジェリーが柔らかな素材のものではなく、固く胸を寄せあげるブラとガードルだったから、尚更そう見えたのかもしれません。彼女にとっては、ランジェリーもまた鎧のようなもの。本当のセルヴィーヌは更にその下に何かを隠しているのです。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など

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