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2018.5.24 Thu

17歳の肖像(2009)

いまの自分を取り巻く環境も、年齢による制限も飛び越えて、みんなよりも一足早く大人になりたい。一見、地味な優等生に見える少女の中にも、そんな欲望が潜んでいたりするものです。1960年代のイギリスを舞台にした「17歳の肖像」のヒロインのジェニーもそんな女の子。労働者階級から努力して中流にまで登ってきた彼女の両親は、ジェニーに一流大学オックスフォードに行って、自分たちよりも高みを目指してもらいたいと考えています。でも、フランスの小説や音楽が好きなジェニーが夢見ているのは、パリに行くこと。そんな願いを叶えてくれそうな男性と彼女は偶然に出会います。雨の日に車で彼女を家まで送ってくれたデイヴィッドです。彼はジェニーの倍も歳の離れた男性だけど、美術品のオークション会場や高級レストランにジェニーを連れて行ってくれて、彼女に贅沢な大人の世界を垣間見せてくれます。ほんの少し危険な雰囲気の漂うデイヴィッドに、ジェニーは惹かれていくのです。

ジェニーを演じるキャリー・マリガンはグレイのジャケットの制服が似合っていて、いかにもあどけない少女という風情です。制服の下には清潔なコットンのシュミーズを着ていそうです。それがデイヴィッドの手にかかって、見る見る内に洗練されたレディになっていく。ドレスやメイク、新しいヘアスタイル以上にジェニーの変化が分かるのがランジェリーです。二人きりで訪れたパリでの最初の夜にジェニーが着ていたのは、大人っぽいシルクのスリップでした。淡いゴールドのレースがバストにあしらわれたローズ色のスリップはエレガントで、ジェニーの夢見たパリのイメージと重なります。初めて男性と過ごした夜に感じた小さな失望とアンニュイな風情が、彼女を一層大人に見せています。この後、彼女が知るのはもっと苦い真実です。一足飛びに大人になろうとした少女たちは他の娘が徐々に知っていくことを、もっと残酷な形で突きつけられるのです。十代の背伸びは年上の男性との恋愛ではなくて、制服の下にこっそり身につける美しいスリップくらいで十分なのかもしれません。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など

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