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2019.6.16 Sun

焼け石に水(2000)

フランソワ・オゾン監督が敬愛するドイツの映画作家、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの生前未発表の戯曲をもとに作った「焼き石に水」(2000)は、不思議なムードの室内劇です。婚約者とのデートをすっぽかして、魅力的な中年男性のレオポルドについていった青年フランツ。彼を取り戻そうとする婚約者のアナ。そして適合手術を受けて戻ってきたレオポルドの元恋人のヴェラ。四人の想いが交錯し、物語は思わぬ結末へと向かっていきます。
この映画で注目されたのが、アナを演じたリディヴィーヌ・サニエです。子役として映画に出演してきた実績はありましたが、これが女優としての本格的なブレイク作となりました。アナは婚約者を取り返そうとレオポルドのアパートにやって来て、そのままフランツに抱かれるのですが、それ以降、レオポルドが戻って来ても、ヴェラが現れても、何故かずっと下着姿のままでした。撮影当時のリディヴィーヌは二十歳になるかならないかという年齢だったはずです。ヴェラを演じるスレンダーなアンナ・トムソンと対照的な、はちきれそうな若い肉体。彼女が水色のブラとショーツだけで室内を動き回る姿は印象的でした。

豊かなバストを包むブラジャーはシアーな素材に透かしのパターンが入ったもの。揃いのショーツがジャストウェストの大きめサイズであるところに、アンバランスな子供っぽさがあります。彼女はそのままの姿で他の三人の語らい、サンバを踊るのです。
この時の度胸の良さが認められて、リディヴィーヌ・サニエはオゾン監督のお気に入りとして彼の作品に連続して出演することになります。ミュージカル仕立てのミステリー映画「8人の女たち」(2002)ではカトリーヌ・ドヌーヴやイザベル・ユペールといった大物女優に混じって存在感を発揮し、「スイミング・プール」(2003)ではオゾン監督のミューズであるシャーロット・ランプリングと共に主演を務めました。飾り気のない水色のランジェリーだけで勝負した「焼け石に水」は、リディヴィーヌ・サニエのキャリアとしての出発点なのです。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など

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