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2019.1.23 Wed

マリー・アントワネット(2006)

ソフィア・コッポラ監督の「マリー・アントワネット」は、マカロン色の衣装で彩られたファッショナブルな歴史劇でした。ニューウェイヴの曲を使ったサウンドトラックと同じくらいスタイリングも大胆で、美しい靴のコラージュ・シーンにコンバースのスニーカーが忍ばせてあったことも話題になりました。大胆といえば、マリー・アントワネットとその愛人であったスウェーデンの貴族、ハンス・アレクセル・フォン・フェルセンのベッド・シーンもそうです。キルスティン・ダンスト演じるマリー・アントワネットがベッドで白いストッキングとブルーのガーターだけをまとい、裸身を可愛らしい扇で隠している姿はこの映画を象徴するスチールとなりました。

当時のマリー・アントワネットがこの格好になるまでに、どれだけのアンダー・ガーメントを脱がなければならなかったのか考えると、気が遠くなりそうです。普段のドレスだとこの上から刺繍で飾られたペチコートを履き、上半身はシュミーズを身につけた後にコルセットで覆い、スカートを大きく膨らませるためにクジラのヒゲで出来た巨大なパニエを着けていた訳です。小トリアノン宮殿で取り巻きたちと田園風の生活をおくっていた時は、下着ももう少し簡素なものになっていたかもしれません。アントワネットは妊娠した後、パニエを着けるのが困難になり、彼女のお抱えデザイナーのローズ・ベルタンはアントワネットのためにネグリジェを改良したマタニティ・ドレスを作ったということです。それ以降、貴族の女性たちの間でもゆったりとしたモスリンのドレスが流行するようになりました。
ベルサイユ宮殿では、アントワネットはベッドで目覚めてからネグリジェを脱いで全ての下着を身につけ、ドレスを着るまでの過程を多くの貴族たちに見せなくてはなりませんでした。でも、フェルゼンとの逢瀬はプライベートなもの。ストッキングだけのヌードの姿は、マリー・アントワネットが束の間だけ味わう自由の象徴なのです。それは彼女にとって、どんな豪華なドレスよりも大きな贅沢だったに違いありません。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など

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