momolife

WILD FLOWERS WILD FLOWERS

2018.6.27 Wed

ネオン・デーモン(2016)

「若くて痩せているってだけじゃない」。
ニコラス・ウェンディング・レフン監督のサイコ・スリラー、「ネオン・デーモン」で先輩モデルのジジはそう言って、田舎から出てきた駆け出しモデルの十六歳、ジェシーを鼻であしらいます。でもレフン監督の残酷なファンタジーのようなこの映画では、「若い」ということがモデル業界で何よりも尊ばれることとして描かれています。
 それが顕著なのが、ジェシーが他のモデルたちと共にファッション・ショーのオーディションを受けるシーンです。部屋にはパイプ椅子に座った美しいモデルがずらりと並びます。全員がハイヒール以外、身につけているのはブラジャーとショーツというランジェリー姿。プロポーションを見せるにはそれが一番という意図なのでしょうが、危険な雰囲気も漂う場面です。特に、年若いエル・ファニングが演じるジェシーのランジェリー姿には、見てはいけないものを見てしまっているかのような背徳感があります。他のモデルが洗練された黒いランジェリー姿なのに対し、彼女はサーモン・ピンクのブラとパンティ。それはミルク色の肌を引き立て、十代の彼女には似合っていますが、いかにも“下着”という感じです。本来ならば制服やドレスの下にあって、彼女がそれを着ているということを想像することさえためらわれるような。

でも、だからこそ、このジェシーのランジェリー姿は魅力的でもあるのです。少女の無垢が放つ繊細なチャームがあります。有名カメラマンとのプライベート・フォト・セッションでも彼女はペラペラのワンピースとスニーカーを脱いで、ピンクの下着だけの姿になります。見せるランジェリーではないからこその美しさ。デザイナーやカメラマンがジェシーのような少女に求めたのは、若さ以上にそんなイノセンスなのでしょう。
 そんな清純な美しさは、人目にさらされた途端に潰えてしまいます。可愛らしい少女の心は欲望で汚れ、気がつくとピンクのブラが似合わない毒々しい女性になってしまう。エル・ファニンングがキュートなだけに、そこが悲しく、怖いのです。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など

LINGERIE IN CINEMAS
TOP