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2018.11.28 Wed

スカーフェイス(1983)

「スカーフェイス」(1983)はキューバからアメリカのマイアミに亡命してきたトニー・モンタナ(アル・パチーノ)が、コカインの密売によってギャングの世界で成り上がっていく話です。下っ端のギャングだった頃のトニーが一目で恋に落ちたのが、彼のボスの情婦であるエルビラでした。ミシェル・ファイファー演じるエルビラのトレード・マークとなっているのが、スリップ・ドレスとランジェリーのスリップです。ガラス張りのエレベーターで降りて来る登場シーンでは、細いチェーンのストラップがついたエメラルド・グリーンのスリップ・ドレス。深いスリットの入ったそのドレスをノーブラで着たエルビラはセクシーそのもの。スレンダーな肢体のミシェル・ファイファーだからこそのファッションで、まるでランジェリーで登場したようなインパクトがありました。猫のような瞳を際立たせるために前髪を切りそろえた金髪のボブ・スタイルも、この思い切ったスタイルに合っています。彼女はトニー・モンタナにとって夢の女。そのイメージはスリップのスタイルと結びついています。

この出会いの時のスリップ・ドレスと対になっているのが、トニー・モンタナと結婚後にエルビラが自宅のバスルームで着るスリップです。バスルームといっても普通のお風呂ではなく、立派なクローゼットもあれば、エルビラのドレッサーも、バー・カウンターもテレビもある。設備が立派な上に、金と大理石で飾り立ててある、富の象徴のような部屋です。エルビラはそこでモーヴ色の蝶々のプリントが入った白いシルクのスリップを着ています。ドレスと同じようなチェーンのストラップがついたスリップは前が開いているスタイルで、彼女は下に同じプリントのパンタロンのようなアンダー・パンツを穿いています。ランジェリーと部屋着の中間のようなスタイルです。自分の勢力拡大とお金にしか興味のないトニーにエルビラは既にうんざりしています。エルビラと弟分のマニーが去った後のバスルームで、一人虚しく葉巻をくわえながら泡風呂に浸かるトニー・モンタナが印象に残ります。彼が追い求めた女はスリップを翻し、蝶の残像を残して部屋を出ていったのです。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など

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