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2018.8.23 Thu

アメリカン・ドリーマー 理想の代償(2014)

「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」の舞台は1981年のニューヨーク。オスカー・アイザック演じる主人公アベルは、クリーンなビジネスを信条にオイル・カンパニーを経営してきたラテン・アメリカからの移民一世。成功をつかみ、事業を拡大しようとしていた矢先、姿の見えない敵から妨害を受けるようになります。トラックから積荷であるオイルが何者かに強奪され、脱税の疑いをかけられ、家族にも危害が及びそうになる。銀行からも融資を引き上げられそうになり絶体絶命のアベルを支えるのが、妻のアナです。アナは理想主義者の夫と違い、自分たちの身を守るためなら悪事に手を染めることも厭わない強い女性。ジェシカ・チャステインにぴったりの役です。
1980年代のファッションでも話題だったこの社会派サスペンスで、チャステインが着ているのはアルマーニのヴィンテージです。会社の経理をこなし、ビジネスにおける交渉の席に夫と同席し、警察にも動じないアナにグラマラスでストイックなスタイルは似合っていました。そんな強い女性は、服の下にどんなランジェリーをつけているのでしょうか。

セールスマンへの暴力が止まず、強奪犯に発砲してしまった自社のトラック運転手も行方不明。そんな状況で帰宅した夫を迎えるアナは、寒そうな階段の踊り場でスリップの上にツィードのコートを羽織り、煙草を吸っています。涙を流しながら不甲斐のない夫を責めるアナが着ていた贅沢なスリップは黒いレースで縁取りされたタフタ・シルク、色はゴールド。しかも淡いシャンパン・ゴールドではなく、主張の強いイエロー・ゴールドでした。滑らかな生地は暗い室内でも光沢を放ち、まるでメタルで出来ているかのようです。アナは鋼鉄の鎧の下にもろいハートを秘めている女性ではなく、内部も輝く金属のように強い。それが後半の展開で明らかになっていきます。綺麗事を語る夫の陰で、彼女が何をしてきたのか。理想を守るためなら、時にダーティなことも出来る。あのスリップはそんなタフな女性にふさわしいものでした。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など

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