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2018.4.11 Wed

つぐない(2007)

映画「つぐない」(2007)の舞台は、1930年代から40年代にかけての英国。贅沢な邸宅に暮らす十三歳の少女ブライオニーはある日、庭の噴水の前にいる姉のセシーリアと使用人の息子のロビーの姿を窓から見かけます。彼女が目にしたのは、セシーリアがロビーの目の前で服を脱ぎ捨てるというショッキングなシーンでした。
 実はセシーリアとロビーはケンブリッジ大学の同窓生。密かにお互いを思い合う仲でしたが、官僚の娘であるセシーリアと労働者階級のロビーは、現実世界では身分違いです。ブライオニーが二人を目撃する少し前、セシーリアは花瓶に噴水の水を入れようとしていました。ロビーが手伝いを申し出ると、彼女はピリピリしてそれをはねよけようとします。その結果、花瓶が割れて破片が噴水に落ちてしまったのです。怒りと緊張で高ぶる思いを抑えられないセシーリアは、ロビーの目前でスリップ一枚の姿になり、噴水に飛び込んで破片を取りに行ったのです。ブライオニーが想像したような経緯とは違うかもしれませんが、この場面のセシーリアは挑発的です。

セシーリアを演じたキーラ・ナイトレーは、ジェームズ・マカヴォイ演じるロビーの目をまっすぐに見て、シフォンらしき柔らかなブラウスとタイトスカートを脱ぎ去ります。服の下はゴールドのレースがついたシルクのショート・スリップ。噴水から彼女が上がってくると、そのスリップはぴったりと彼女の肌に張りついています。まるでヌードのようですが、濡れた下着がセシーリアの白い肌に吸いつく様子は、本当の裸よりも官能的でした。これはあなたのせいなのだと彼女は強い視線でロビーに訴えます。二人は触れ合ってもいませんが、これはラブ・シーンなのです。
 この場面がブライオニーの妄想を掻き立て、彼女が勝手に仕立てたストーリーがセシーリアとロビーの恋を悲劇に追い込むことになります。水に濡れたシルクの下着は、夢見がちな少女が初めて知った大人の恋の象徴だったのです。ブライオニーを演じたのは、撮影当時十二歳のシアーシャ・ローナン。この映画で初めてアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされました。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など

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