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WILD FLOWERS WILD FLOWERS

2017.6.23 Fri

graduation (1967)

「ロビンソン夫人、僕を誘惑しているんですか?」
 1967年の映画「卒業」で、ポスターにもなったあまりに有名なシーンのセリフです。セリフの主で映画の主人公のベンジャミンは大学を卒業したばかりの青年、相手のロビンソン夫人は彼の父の仕事仲間の妻。年上の人妻は夫のいない家にベンジャミンを誘い、スツールの上で片膝をついて、シアーな黒いストッキングに包まれた足を高々と上げてみせます。レースガーターの先にあるのは、あらわな太もも。自信がある大人の女性でなかったら、とても出来ない芸当です。この後、ベンジャミンはロビンソン夫人とただならぬ仲になり、ホテルで逢瀬を重ねることになります。
 

ニュー・シネマの名作として名高い「卒業」ですが、ロビンソン夫人を演じるアン・バンクロフトのセクシーなランジェリー姿も評判になりました。ポスターの黒いストッキングや黒いレースのブラジャーも印象的ですが、ロビンソン夫人のアイコニックな一枚ということで言えば、レオパード柄のブラとガードルのセットでしょう。ビキニの跡が残る日焼けした肌とあいまって、鮮烈でした。これ以降、大人の女性のランジェリーとしてレオパード柄は定番となっていきます。監督のマイク・ニコルズはジャングルの野生動物のようなイメージが欲しくて、ロビンソン夫人にレオパード柄を着せたと言います。ランジェリーだけではなく、レオパード柄のコートに、襟にレオパードがあしらってある黒のスーツに揃いのピルケース・ハットと、ロビンソン夫人の着る物にはあらゆるところにこの女豹のイメージが潜んでいます。恋愛相手として年下の男性を狙う、金銭的にも人間的にも余裕がある大人の女性のことをクーガー(ピューマ)と呼ぶようになるのは、ずっと後のことです。クーガーという言葉が出来る前から、レオパード柄が似合うロビンソン夫人はクーガーだったのです。
 気だるい魅力に溢れたロビンソン夫人を演じた時、アン・バンクロフトはまだ36歳だったというから驚きです。一方、ベンジャミンを演じるダスティン・ホフマンは31歳。そんなに年齢差がなかったのです。

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など。

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