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2019.7.24 Wed

アイズ ワイド シャット(1999)

鬼才スタンリー・キューブリックの遺作となった「アイズワイドシャット」(1999)。当時、私生活でも結婚していたトム・クルーズとニコール・キッドマンが夫婦役で出演したのも話題になりました。二人が演じるビルとアリスはニューヨークに暮らす倦怠期の夫婦。夫のビルは裕福な開業医で生活には何も不自由しない身分なのに、アリスは何故だかアンニュイで、欲求不満を抱えています。ある日、ベッドでくつろいでいる時に前日のパーティのことでビルと言い合いになったアリスは、自分の欲望を吐き出します。バカンス先で一瞬、すれ違っただけの海軍士官兵に激しい恋心を抱き、彼との逃避行を夢見ながらビルに抱かれたと言ったのです。それまで完璧な生活をおくっていると信じていたビルにとって、それは衝撃の告白でした。患者に呼ばれてそのまま街に出た彼は、妄想に取り憑かれます。その危険なファンタジーが、ビルが想像もしなかった世界への扉を開くことになるのです。

ビルとアリスの言い争いのシーンは生々しく、この映画の公開の二年後にクルーズとキッドマンが離婚したことで様々な憶測を呼びました。そのシーンでニコール・キッドマンが着ていたのが、スイスの有名アンダーウェア・ブランドのコットン・キャミソールとハイレグのショーツです。ランジェリーというよりも肌着と呼んだ方がふさわしいシンプルなデザインで、飾りは一切ありません。しかしシルクのようになめらかなコットンの生地を通して見えるキッドマンの赤い乳首と美しい肌が素晴らしく、どんなゴージャスなランジェリーにも負けないほどセクシーでした。ショーツの脚ぐりのカットも絶妙で、彼女の完璧なプロポーションを引き立てています。白いコットンから透ける怒りと欲望で赤味が差していく肌。それは爆発しそうなアリスの内部そのものです。
マリリン・モンローが「七年目の浮気」(1955)の有名な地下鉄の通気口のシーンで身につけていたのも、このブランドのショーツでした。映画史で最もセクシーなシーンを彩ったのは、シンプルな下着だったのです。
 

山崎まどか

コラムニスト、翻訳家。映画や音楽、文学などカルチャー全般に造詣が深く、特に女子という軸から紐解く独自の視点にファンが多い。主な著書に『女子日和』(アスペクト)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)など

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